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夕食のあとトラムで中環(セントラル)までゆっくりと夜景を見ながらもどる。香港島にそびえ立つビル群は恐ろしいほど高い。地震の経験がないらしいが、一度でも発生すればパニックになるだろう。天星小輪(スターフェリー)でチムシャッツイへ渡り、天星馬頭(フェリー乗り場)からバスを使って旺角(モンコク)へ。

食後の運動のため女人街を散策する。昼間は普通のストリートに夕方から露店が立ち並び、男人街とともに夜中まで多くの人でにぎわう。ニセブランド品やコピーTシャツ、音楽CDやライター、目覚まし時計まで雑多な小物が勢ぞろい。今までどちらかと言えばゆっくり歩いていたカリメロさんがスタスタと前を行く。チープなものに興味がないのか、疲れがピークにきているのか、きっとその両方なのだろう。

狭い香港では、二人が肩を並べて歩くシーンが少ない。どうしても私が前を歩き、カリメロさんが後ろからついて来る。ときどき振り返るのだが、右から振り返ればカリメロさんは左後ろに、左から振り返れば右後ろにと、まるで白バイか忍者のようについて来る。私は前を行くカリメロさんに特別気持ちの良い場所へいくことを提案した。

結局、地下鉄1駅強を歩いたわれわれは、そのまま足裏マッサージへと直行した。十数年前、コウズウェイベイの1軒しか知らなかったが、今や群雄割拠の戦国時代、日本でも珍しくなくなった。油麻地(ユマティ)にある足保健は地元の人を対象にがんばっている店で、広東語を少ししゃべるだけで手抜きされることはない。一時間たっぷりマッサージしてもらって一人135ドル。カリメロさんは初体験らしく感動しきりだった。実際、直後の足の軽さは、香港中を歩き回った者でないと体験できない。

笑顔のもどったカリメロさんと通りの向かいにある義順で牛乳プリンを食す。にっきちさん一押しの店で、以前から知っていたのだが、何せ牛乳ギライのヨメハンとは行けず私にとっても初チャレンジであった。閉店間際にもかかわらず店内はほぼ満員、肌寒かったので温かいものを注文する。オーダーミスをしないためメニューをにらみ、あらかじめ手帳に書き込んである漢字と何度も見比べた。味はうわさ通り絶妙で、くせになること間違いない。今後は足裏マッサージ+義順牛乳プリンをセットコースと決めた。

地下鉄でホテルへ帰り、シャワーを浴びてすぐに眠りにつきたいところを我慢して荷造りを済ます。いよいよ明日は最終日、切ない気分になる。それ以上考えると、帰国後の仕事を意識してしまうのであわててベッドにもぐり込んだ。

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