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上環にあるウエスタンマーケット内の数軒の中古時計店が閉店していた。そんな中、時計部品を売る見慣れない小さな店を発見、さっそく入ってみると、どこかで見た顔、なんと、別の場所でアンティーク店を営んでいたオヤジではないか!ここ最近のスポーツロレブームのあおりを受けて思うように仕入れが出来ず閉店、経費の少ないこちらに移ったとのこと。全盛期は手巻きコスモ6265の茶色目やパネライのオリジナル、バブルバックやバイセロイなど在庫も豊富で、日本ツウの気さくなオヤジがなんとなく私の視線をそらし、うつむき加減でボソボソと話していた。香港の不景気さを改めて肌で感じた。

世界で唯一の二階建て市電(トラム)に乗って中環へと向かう。ここで数軒の時計店を回った。まずは、アジアで唯一のアカデミー(スイス独立時計師協会会員)矯大羽(キュータイユー)氏の店を訪れた。ランドマークの向かいのビルにある小さな店で、カリメロさんはあまりの狭さに驚いていた。私も偶然この店を発見したときは、ご本人から名刺を頂いてはじめて分かったものだ。香港人にしては大柄な方で、一見しただけでは時計職人とわからないほどごく普通の、いや、どちらかといえば薄汚いセーターを羽織ったそのへんのオッちゃんという感じだ。氏は愛想良く狭い店に不釣合いなほどのデカイ金庫からオリジナルの時計をふたつ見せてくれた。残念ながらトゥールビヨンではなかったが、どちらも氏独特のアジアテイストを散りばめたズッシリとした18Kで100万円以上の代物だった。

ランドマークでMISSONIやヴィトンなどにお付き合いいただいたあと、ディクソンウォッチ(正規代理店)を冷やかしてみた。予想通りデイトナSSの在庫は皆無で、ロレックスの値段も日本とほとんど変わらない。これでは旅費等を考えると採算は合わない。

デイトナ・コンビ(116523)62,832ドル

ロレジウム・ボーイズ(168622)38,862ドル

サンダーバード(16264)27,345ドル

GMTK(16710)25,185.5ドル

サブデイト(16610)25,177ドル

エクスプローラJ(114270)24,550ドル

これらの価格は、すべての付属品が揃った新品の当日の定価である。

続いてランドマーク隣のビルにあるアンティーク店をのぞいた。サンダーバード・グレーバーインデックス・ジュビリーブレスが27諭吉、9KYG/SSのバブルバックが35諭吉で、ほかに特記すべきものはなかった。

繼L(ヨンキー)で少し遅い昼食をとる。ピーク時はいつも満員だが時間をずらすと簡単に席を確保できる。一代で屋台から自社ビルを建てた香港ドリームさながらの店で、座ると必ず出されるピータンの味は絶品だ。このピータンの売り上げは従業員で山分けされるというから気合が入っているのも当然!看板料理のローストグースに白灼蝦(パクチョハー:活エビを茹でたシンプルな料理)を平らげる。(340ドル)う〜ん、こうして書いているだけでヨダレが出そうだ。

地下鉄(MTR)でホテルへ戻り、周辺の時計店を回ってみる。まずは7イレブンの近くの店。この店も私の直感で探し当てた。ここの店主は若いが中古品の品揃えは抜群だ!かなりのネットワークを持っているようで、しかもトレンドを押さえている。残念ながら値段は香港ではかなり割高で日本と変わらない。16520のデイトナや5512サブ、16570エクスプローラK白文字盤の珍しいオレンジインデックス、チュードルクロノのモンテカルロにバブルバックなどなど・・・そんななか1665シードが34諭吉強とかなりお買い得。オリジナルドームではないようだが程度もそこそこ、カリメロさんと二人で色めきたつ。これが親父の店なら即ゲットなのだが、ここはゲストのカリメロさんに勧める。たぶんカリメロさんも感じていたと思うが、他の割高商品に比べこのシードだけが異常に安いのは少し気になった。このあたりの理由が分からないと手が出しづらい。結局、他の店も見てから結論を出すことにした。

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