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外食産業が盛んな香港ではレストランの予約は欠かせない。世界一の人口密度と住宅事情の悪環境により、昼は職場の同僚と、夜は気のあった仲間と大勢でテーブルを囲む。予約がなければ1時間待ちはザラ、しかも看板料理はすぐに売り切れとなる。

カリメロさんの希望であった上海ガニは、シーズン中大抵のレストランで食べられるのだが、本場上海料理専門店に越したことはない。私は過去支店も含めて数回利用したことのある香港老飯店を選んだ。幸い当日予約もOKで、時間まで周辺の時計店を回ることにした。

ミラマーホテルの景福(正規代理店)のレイモンド氏に会いに行く。見当たらないので副主任のこわもておばちゃんに聞くと彼は退社したとのこと。ここでも不景気を感じる。彼からパテック3796/18KPGやDJコンビ79173、DJボーイズ78274NRDピンクシェルデコレーションを購入して実績作りをしていただけに残念。

かなり広いスペースに各メーカーの陳列を並べ堂々とした格式のある店だったのが、訪れたときはパテック、パネライ、フランク、ブレゲなど別の部屋で仕切られていてなんだか威厳が落ちたような気がした。しかし、この副主任のおばちゃんを見るたびに、香港の接客は顔ではない・・・いや、もしかして経営者の身内?なんて思ってしまう。

もともと中古カメラ店が集まるビルに時計の質屋が参入し、小さな中古時計店がひしめきあう場所がある。カメラは圧倒的に日本製が多いが、相場については詳しくないのでよく分からない。質屋ではデイトナ16520白が90諭吉、16610LV緑サブの新品らしきものが68諭吉で飾ってあった。アンティーク店については在庫は少ないが時々珍しいものがある。ある店はプリンス・フレアードのクウォーターセンチュリークラブを見せてくれた。程度は悪くはないが100諭吉強と値段もそこそこ・・・探している人にとってはラッキーかもしれないが・・・。

ほかでは、パテック3796の18KYGが59諭吉、バーインデックス・黒マットのエンジンターンドベゼルSSバブルバックが20諭吉、12・3・6・9の飛びアラビア18KYGのバブルバックが40諭吉、角型ノンオイスターが18諭吉など。

別の店ではカリメロさんが時計といっしょに飾ってあった明治の一円銀貨に興味を持ち

「これ、まかりますかね〜?」とおっしゃる。

「カリメロさん、古銭も集めてはるんですか?」

「いやぁよく分からないんですけど、日本ではもっと高かったはずなんですよね。」

不思議なもので、全然興味のない私も急に欲しくなってくる。店主に聞いてみるとあっさりマケてくれた。こうなるとカリメロさんも引けなくなったようで買ってしまった。その場では言えなかったが、あの気前よいマケっぷりがかえって不信感をつのらせた。まあ、カリメロさんにしてみればたいした額ではないし、これまで何も買っていなかったのだからこれで少しストレス解消できたのかもしれない。

「カリメロさん、たいしたことなかったら、メモリアルカウントのプレゼントにでもしたら〜」なんて冗談を言ったが、未だ放出していないのは、よほど値打ちがあるか、まったくないかのどちらかだろう。

昼食が遅かったため夕食は午後9時に予約していた。香港老飯店はこの時間でもほぼ満員状態、地元民で活気にあふれていた。酔蟹(活きたまま紹興酒に漬け込んだもの)、上海蟹の姿蒸、鶏肉とふかひれのスープ、塩ブタと野菜、四品で1,400ドル(一人約一万円)。

さすがに上海ガニは高価だが、それだけに味も高貴、特にミソは濃厚で一度食べたら病み付きになる。上海ガニのピークシーズン時(10月)は、香港中のホテルが一斉に宿泊料を値上げするのも仕方がないのかもしれない。

夕食後、白ウサギチャンをいじめることもなく、7イレブンでミネラルウォーターを買い込み、午後11時過ぎホテルへ帰った。

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