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おじゃまします。

   先生、お見えになりました〜。

   お待ちしておりました。さぁ、どうぞ、お入りください。

遠くからご苦労じゃのう〜。

   いえ、ご高名はネット世界でとどろいておりますから。先生に診ていただけるだけで光栄です。

そうか、わしもまんざらでもないということじゃな!ふむふむ。

そういえば昨日も礼状が届いておったわい、名前は・・・・えーっと、・・・・最近は物忘れがひどくていかん!・・・ほれー、なにやら京都と関係あるような・・・・金閣寺?いや、ちがうのぅ・・・・。

まぁ、よい、おぬしとは関係ないことじゃのぅ、ふぉっほっほっ!

   コーヒーですが、どうぞ。

      ありがとうございます。でも、こぼすといけませんから、あとでいただきます。

   そうですか。ではお下げしておきましょう。

      申し訳ありません。

   大事なお宝に万一のことがあってはいけませんものねー。

      先生、すべて持ってまいりました。二年間で集めた私の命です。

どれ、ほーっ!こりゃぁ、すごい!お宝ばかりじゃのう〜。1665が2本、1680が2本に1655、1016、16520、さらに6263か・・・・

      すべて黒で統一しています。

なるほど、赤いロゴがアクセントになっとるわぃ、では・・・(巨大キズミで6263を覗く)

ああっつ! (一瞬のうちにキズミをそらし、時計をゆっくりとテーブルに戻す)

      先生、どうかなさいましたか? ほっ、ほかの時計も診てください。

もっ、目撃の相!・・・・

      モクゲキ?!

ふむー、これは稀に見る相じゃ!

孔子が賢者と会うたときの印象を『荘子』にこう書かれておられるのじゃ。

・・・・かの人のごとき者は、目撃して道存す。また以て声を容る可からず・・・

賢者は一目見ただけで道の体得者だとわかる。言葉で説明するまでもない、とな。

つまり、おぬしは一瞬にして本質を見抜く力をお持ちのようじゃ!

雪解け水は高きより流れ、滝を落ち、沢を下り、己が行く道を悟る。志を持つ者だけが大川の緩やかな流れを見て、その険しき道のりを知る。

      はっ、はぁ〜・・・。

おぬし、このキズミを使ってわしのバブル・バックを診て思いつくことを言ってみなされ。

      はい。

先に言っておくが、トイレは突き当たり左側じゃ!

      (巨大キズミを借りて覗き込む)

      えー、そうですねぇ〜、若輩・・・後悔・・・満足・・・。

やはりのう〜。おぬし、わしに弟子入りせんか?おぬしの見識眼なら2、3年で独立できよう。

      先生、私はただのコレクターですから・・・。

そうか・・・残念じゃのぅ。

おーぉっ、そうじゃっ!最後にこの時計を診てくれぬか?

これは知り合いの奥方のものじゃが、ちょっとわけありで・・・。

      DJコンビ・ボーイズですね・・・あれっ、ひとコマ追加されてますね。

      えー、そうですねぇ〜・・・。

どっ、どうじゃ・・・?

      肥満・・・怠慢・・・傲慢・・・エル罰ス、先生なんですか?

この時計はっ!

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・。

      知り合いって、ひょっとして先生の奥さんの・・・?

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